​声楽教育は自己教育である

誰だって、もし出来るなら美しい声で上手に歌いたいって思っていますね。

声は、一人一人違うもの。まるで私たちの顔のように。

歌の上達のために大事な最初の一歩は、自分の声が素敵だなと思える事です。

そうすれば素敵な自分の声を、大切に育てたいと思えてくるはずです。

声楽技術の向上のためには、自身への深い愛情(=忍耐力)が要求されます。なぜなら、自分の声を育てていく過程で、自分自身と真摯に向き合い、現在の自分を受け入れ、何があろうとも自分の人生に集中し、着実に歩みを進めていく事が必要不可欠だからです。

 

この事から私が声楽の師匠から学んだことは、「声楽」という名の「人生」だったと思っています。そしてその学びは現在も、変わらず続いています。

私は2012年にドイツから帰国して以来、声楽教育に携わっています。
ドイツでは、声楽を専門的に学ぶ事はもちろんのこと、ワイマール・フランツリスト音楽大学声楽教育学科にて、声楽レッスン、合唱指導、指揮法、解剖学、声楽レッスンに必要なピアノ伴奏法等を学びました。
これらに加えて、非常に興味深かった科目は、「二つの傾向を持つ呼吸法」です。(詳細は下にある私の体験談をご覧ください。)これは「人間が誕生してからその生涯を終えるまで、絶え間なく繰り返されている呼吸が自分の身体にあっていることは、人生を豊かにする」という考え方から生まれた体験学問です。
 
ドイツでは60年以上前から研究が行われており、現在は医師、クリスチャン・ハーゲナー氏を中心に研究が進められています。また多くの国立歌劇場の歌手たちの間でディスカッションが行われており、音楽大学等での声楽教育の現場でも積極的に取り入れられています。またこれに関する多くの文献が出版されています。
​そして私は現在、この呼吸法およびそれを用いた声楽教育を日本で紹介できるよう、大学で研究を行なっています。私のレッスンでは、この呼吸法に基づき、一人一人の身体に適した発声技術および、豊かな音楽表現力の習得を目指します。
 
基礎的なところから丁寧に学びたいと考えておられる方、呼吸法、発声法で悩みを抱えている方は、面談、体験レッスンを行なっておりますので、ホームページのコンタクトからご連絡ください。
対象
● 声楽専攻を卒業し歌っておられる歌い手の方
● 音楽大学卒業後、テクニックの更なる向上
● 音楽大学および音楽高校声楽専攻受験生
● 音楽教育専攻受験生および大学生
● 小学校、中学校、高等学校等で合唱指導をされている音楽の先生
● 歌うこと、声楽を学ぶことを通して人生に更なる喜びを感じたい愛好家の方
声楽のレッスンは、身体と声帯(声を出す筋肉)の成熟具合を考慮し、基本的には高校受験生(中学生)以上の方を対象とさせて頂いております。お子様の場合は、希望するレッスン、学びたい目的等を、ご相談ください。

​【二つの傾向を持つ呼吸法に関する私自身の経験】

初学者が声楽を学ぶプロセスは、信頼のおける教師の歌い方を真似るところから始まります。
 
しかし教師の呼吸法、歌唱法が自身の身体に適合しないことで悩む生徒も少なくないのではないでしょうか。

着実な声楽技術の向上には、生徒自身の持つ素材、努力、また教師の指導力、人間力等が必要不可欠である事は議論の余地がありませんが、声楽という分野において、そもそも全ての人間は同じ呼吸法を持っているかどうかについて、まずは考えてみることも大切ではないでしょうか。

 

『呼吸テクニック』

 

それは、「自分の身体に合った呼吸法の習得の為なら、藁をも掴む!」気持ちになる程、歌い手にとって重要な事だからです。

私は、2006年に渡独し2012年までの6年間、恩師であるマリエッタ・ツムビュルト氏(Marietta Zumbült)の門下生として、週2回声楽のレッスンを受講していました。

最初の1年間のレッスンは悪夢のようだったことを、今でも鮮明に覚えています。決して先生が怖かったからではありません。(笑)一生懸命歌っていると強い吐き気を催し、30分もしたらそれ以上歌えなくなる事が度々あったのです。

そんなある日、ツムビュルト先生から「ミキの呼吸法は、私の呼吸法とは合わないかもしれない。今日から別のやり方にする。」と言われました。

私の頭の中は??元々、慣れないドイツ語での会話なので、また自分の聞き違いかと思いました。

 

ともかく、その日から、それまでと全く逆の呼吸法でレッスンを受ける事になりました。

しかし、身体に自然に馴染むとはこういう事だ!と本能的に理解するのに、時間はかかりませんでした。

それ以来、レッスンの際に気分が悪くなることは嘘のようになくなり、呼吸はスムーズに、声は柔軟性を持つようになりました。まるで身体が水を得た魚のように、喜びに満ちた日の事を鮮明に覚えています。

 

つまりツムビュルト先生と私の呼吸法は異なっていたわけです。

 

そして私は今、この1年間の遠回りとも言える経験と、師匠の思い切った舵きりに、感謝しています。

 

なぜなら、一つの世界を理解しようとする時、もう片方の側からそれを見る事で、新たな発見、より深い理解に出会えるから。

 

そして、思い切った舵きりは、私の歌をどうにかしてよくしたい!という親身な気持ちに裏付けされた行動であるから。

そしてその経験が、今現在、私と異なる呼吸法を持つ生徒たちのレッスンに大いに役立っていることは言うまでもありません。

師弟間で偶然同じタイプの呼吸法を持っている場合、教師は自分自身の身体で感じているので、生徒にその本質を伝達しやすく、生徒が体得する為に必要な言葉選びも、比較的スムーズです。

そして言うまでもなく受け取る側の生徒も自分の身体でスムーズに感じ取る事ができます。

しかしそうでない場合、つまり師弟で違うタイプの呼吸法を持っていたとしても、この異なるタイプの呼吸法についての知識を指導者たちが共有し、レッスンが出来れば、教師は生徒の身体に合った呼吸法で指導ができるのです。

 

それは、声楽レッスンに不可欠な師弟の信頼関係の継続においても大変重要です。

私は、この異なるタイプの呼吸法の存在について日本でも多くの歌い手が知り、更に研究が進む事が、声楽教育の発展において大変意義深いと考えています。